なぜ今、お風呂の雑菌が問題視されるのか?

昔に比べると断然便利になった最近のお風呂。ただ、それと同時に心配事も出てきました。それが「おいだき配管の汚れ」です。

風呂を入れるときに最初におこなう「お湯はり」は、日本の厳しい基準で殺菌された水道水を温めているわけですから、大きな問題はありません。ただ、その後の「おいだき」は、お風呂のお湯を循環させて温めますので、私たちの汗や皮脂、垢などが混じって循環されます。これらは雑菌の栄養源になるため、どうしても雑菌が増えてしまいます。

ちなみに「うちはあまりおいだきしていない」という方もいらっしゃいますが、給湯器は設定温度より低いお湯で一気に湯はりをした後、設定温度になるまで自動で「おいだき」をするように作られています。また、おいだき配管の中にはどうしても前日のお湯が残ってしまうため、雑菌が増える要素を残してしまいます。

雑菌は悪?

もちろん雑菌といっても全てが悪いわけではありません。ビフィズス菌などの「常在細菌」とよばれるものは人間と共生しているわけですから、過剰に神経質になる必要はありません。

ただ、免疫力のない、あるいは低下した人の場合、ある種の菌に身体が負けてしまう場合があります。そのため、赤ちゃんやご高齢の方、妊婦の方、アレルギーの方、皮膚疾患のある方などはリスクがあると言えます。

お風呂を入れっぱなしにすると雑菌はどれくらい増える?

それではお風呂にはどれくらい雑菌が繁殖するかを数値で見てみましょう。

3人家族のご家庭で、実際に家のお風呂にお湯をはって、入浴前、入浴後、一晩放置後に分けてお湯の中の細菌数を調べてみました。

●入浴前
40個/1mL

●入浴後
360個/1mL(入浴前の9倍)

●一晩放置後
290,000個/1mL(入浴前の7,000倍!

※衛生微生物研究センター調べ。細菌数:1mL当たりの細菌の個数。培養検査によって算出。

このように、一晩置いただけで細菌はものすごい数で繁殖していくのがわかります。

また、前日にお湯を抜いても、おいだき配管の中にはどうしても前日のお湯が少し残ってしまいます。

リスクの高い菌はあるのか?

さて、浴室内で繁殖する細菌で最もリスクの高い菌は「レジオネラ菌」です。たまに「温浴施設でレジオネラ肺炎に感染して高齢者が死亡」というニュースが流れますが、それがレジオネラ菌によるものです。レジオネラ菌は土の中や公園の噴水など、どこにでもいる細菌です。

また食中毒の原因菌である「大腸菌」や「黄色ブドウ球菌」もリスクのある細菌です。黄色ブドウ球菌はアトピー性皮膚炎との関連も報告されているため、アトピーの人がこの菌に接し過ぎることは皮膚炎の悪化ということにもなりかねません。

レジオネラって何者?

ここで国立感染症研究所のレジオネラに関するレポート(抜粋)を見てみましょう。

「レジオネラ肺炎やポンティアック熱は、エアロゾルを発生させる人工環境(噴水、ビルの冷却塔、ジャグジー、加湿器等)や循環水を利用した風呂が屋内外に多くなっていることなどが感染する機会を増やしているものと考えられる。」

→ 循環水を利用した風呂・・・すなわち、それがおいだき機能です。

「(レジオネラ肺炎は)誰しもが発症するわけではなく、細胞性免疫能の低下した場合に発症しやすい。」

細胞性免疫機能が低下したヒトでは肺炎を起こす危険性が通常より高いので、特に留意する必要がある。高齢者や新生児のみならず、大酒家、重喫煙者、透析患者、悪性疾患・糖尿病・AIDS患者はハイリスク・グループである。」

→ レジオネラ肺炎の感染率は低いので、健康な方であればそれほど心配はいりません。

「2000年3月の静岡県の温泉では23人(2人死亡)、2000年6月の茨城県の入浴施設では27人(3人死亡)、2002年7月の宮崎県の温泉では46人(7人死亡)の集団感染が発生した。」

→ ただし、いざ感染すると死亡するケースもあります。

「1999年6月に発症した新生児レジオネラ肺炎の場合、生後8日目に死亡した。」

→ 赤ちゃんは少し心配です。

「循環式モデル浴槽におけるレジオネラ属菌の増殖をみると、一般細菌や従属栄養細菌の増殖の後に、それを補食するアメーバが増え、最後にアメーバの中で増えるレジオネラ属菌が増殖する。したがって、換水や洗浄により環境を清浄に保てばレジオネラ属菌は増殖しない。

→ 逆に言えば雑菌が増えるに従い、レジオネラ菌の発生率は高くなります。

「浴槽水の清浄度や、浴槽壁にレジオネラ属菌が生息するバイオフィルムの程度を現場で検査するには、ATPの測定が有効である。測定値を一定以下にすることによりレジオネラの汚染率を低く保つことができる。」

→ 弊社ではATP測定器による細菌検査をおこない、安全圏の数値になるまで洗浄をおこないます。

レジオネラ属菌の増殖する20〜45℃を外して低温あるいは高温にして温度管理すればレジオネラ汚染を抑制できる。60℃以上ではレジオネラ属菌は殺菌される。」

→ 残念ながら一般のお風呂の設定温度は通常41~42℃。レジオネラ菌が活発に繁殖する温度です。そしてお風呂の設定温度は最高でも48℃ですから、レジオネラ菌は死にません。

バイオフィルムとは何か?

バイオフィルムという言葉が出てきましたので、それについても少し解説します。

三井農林株式会社MMID 麻布大学生命・環境科学部 古畑勝則准教授 衛生微生物講座より抜粋

「浴室や洗面所、台所などで、ヌルヌルした物体を一度は見たことがあると思います。「バイオフィルム」という表現だけでなく、最近では洗剤などのコマーシャルの中で「ヌメリ」という表現も使われています。また、ある分野では「スライム」と称されているかもしれません。これらはみな同じ現象で、その主役は微生物です。」

→ バイオフィルムとは、あの「ヌメヌメ」したやつです。

「この現象を微生物生態学的に微生物の視点で捉えると、ごく自然な現象であって、バイオフィルムは微生物の「生活空間」といえます。」

→ バイオフィルムは細菌の「マイホーム」です。

「強固に付着したバイオフィルムを物理的な作用を併用せずに薬剤だけで完全に除去することはできず、バイオフィルムが成熟してしまう前に定期的に洗浄殺菌を行なうことがバイオフィルムによる汚染を防止するためには不可欠であるといえます。」

→ 「マイホーム」であるわけですから、バイオフィルムはそれなりに頑丈です。塩素すら寄せつけません。できあがる前に壊すのが一番です。

レジオネラ菌を発生させないためには?

「レジオネラ属菌はバイオフィルム中で増え続けることから、浴槽水の水処理だけを行ってもレジオネラの供給源を絶たない限り抜本的な対策にはならないと考えられます。このことがレジオネラ汚染対策はバイオフィルム対策であるといわれる所以です。」

→ つまり、最も良いのは1ヶ月に1回、定期的に市販の洗浄剤(ジャバなど)でおいだき配管内を洗浄し、バイオフィルムを作らせないことです。

→ ただ、市販の洗浄剤だけではどうしてもバイオフィルムが取り切れませんし、面倒なのでやらない方も多いです。そこで、大掃除と同じように、少なくとも年に一回はおいだき配管の「大掃除」をして、より安心してお風呂に入っていただけたらよいのではないか、というのが弊社からのご提案です。